中学一年生の秋、私は右足が大きく腫れ、二ヶ月間程学校を休んだことがある。何とか完治できたのは、当時
まだ希少薬品であったペニシリンのおかげである。
わざわざ担任の先生が、自宅を訪問してくださり、その折の見舞い品が、少年向けの平家物語と源平盛衰記で
あった。
恥ずかしながら、この当時、まだ小説を読んだことがなかったのである。
私は、病床で何度もこの本を読み返し、この悲劇の武将・源義経の生き様に心惹かれ、後になって、屋島・壇
ノ浦・平泉など、平家物語の史跡を訪ね歩くようになった。(私にもこんな可愛い時代があったのです)
しかし、古戦場・一ノ谷と義経が幼年期を過ごしていた鞍馬寺だけまだ訪ねていませんでした。そこで今回、
訪京の機会を利用し訪ねることにしました。
生憎、小雨交じりの霧でしたが、それが逆に鞍馬寺の雰囲気を一層深く醸し出し、私を古き良き時代へと誘っ
てくれ、感無量でした。
帰りは、貴船に向かって山道を下り、義経の足跡をと思ったのですが、雨天のため次の機会に譲ることにしま
した。
鞍馬寺の山道
源義経 義経の太刀としてふさわしい品格を備えている太刀
翌日、知人の案内で、源平の古戦場・須磨ノ浦を訪ね、念願の一ノ谷へと足を延しました。
当初私が想像していたより遥かに斜面が急で、ここを馬で下るというのは相当な勇気が必要であったと思う。
ある武将が馬を可哀そうに思い担いで下ったという逸話も頷けた。
源平の古戦場に立ち、平家物語のいろいろな場面に思いを馳せると、夢が果てしなく広がり、時間が止まる。
源氏の兵馬が通った道 一ノ谷附近の景観