例年この季節、東大雪山系・石狩岳山頂直下の稜線には、エゾノキン
バイソウが一面に咲き、見事な群落を形成し、その彼方には急峻なニペ
ソツ山が峰を連ね、登りの苦しさを癒してくれます。私はこの景観がす
きで7月6日より山に入りました。
大雪山系の山容は、どちらかというと、曲線的で女性的な印象を与え
ます。これに対してニペソツ山・石狩岳など東大雪山系は、褶曲山地特
有の荒々しい男性的な山容で、アルペン気分を十二分に味わせてくれる
、知る人ぞ知る名峰で、人気の高い山です。
ただ、残念なことに、音更山から石狩岳を至って川上岳に至る稜線上
には、高山植物保護のため幕営指定地がなく、それが要因かは不定です
が、登山者が少なく、一人静かに山の雰囲気を味わうには最高の場所だ
と存じます。そのため止むなく、この時期だけ稜線の南東傾面に大地上
に残る雪渓に幕営するのもこの山の魅力の一つです。ただ今年は、残雪
が少なく、雪を解かし飲料水を確保するのもままならないほどでした。
それにしても、石狩岳より上川岳に至る稜線のスケール感には圧倒さ
れます。右に、十勝連峰、トムラウシ山、表大雪山系、そして正面のニ
ペソツ山に向かって、急峰な岩峰に沿って辿る、まさに山岳の醍醐味で
す。
少々心残りであったのは、エゾノキンバイソウがまだ蕾のままであっ
たことです、多分、あと三、四日もすると満開になり山肌を金色に染め
ることでしょう。これは、また来てくださいネ!と石狩岳が無言のメッ
セージで、私を招いているような気がしました。
本当に、うれしいことです。