2013年06月09日

心の目

昨日、閉館の準備をしているところに電話が鳴りました。

声の主は上品な優しさを感じさせる女性でした。

以前、ご主人様が私の写真撮影ツアーに参加して下さり、その折の想い出を奥様によく話してくれるとのことでした。ところがその後、ご主人様は白血病に罹り、何とか回復はしたものの不幸にも失明してしまったとのことです。

このご夫婦、開館以来ずうっと当ミュージアムを訪れたいと思っていた、ということで私の都合を教えてほしい、という電話でした。話を伺っているうちに私の胸は熱くなりました。

大病を患った苦しいなかで、私のことを思い出していただけたこと...
光を失ったご主人様が私の写真に何を見ることになるのか...
失明したご主人に写真をみせるという奥様の心情...

失明した彼が私の写真に何を求めているのか、健常者の私には到底うかがい知ることはできません。ただ、私たちは眼を開けて見ていても何も見えていないことがしばしばです。ひょとすると、彼は光を失って初めて今まで見えなかったものが見えてきたのかもしれません。

7月下旬に同じ境遇の友人と一緒に来館されるとのこと。その時、物理的には見えない眼で私の作品を見たとき彼は何を見、彼の脳裏にはどう映るのか、楽しみです。

写真は目に見える世界を表現します。しかし、その本質を知るには目に見えない世界を見る「心の目」が不可欠であり、それによってどれだけ深く洞察し感じることができるか、これが最も大切なのではないでしょうか?
posted by sounkyo at 10:25| 館長のつぶやき